概要

CKS Webは、中央光学出版株式会社が2005年から提供している日本国内の特許検索に特化した商用データベースである。昭和46年(1971年)以降の特許情報を網羅し、100種類以上の豊富な検索項目と高度な検索機能を備えていることが特徴である。特に、図面に記載された表中のテキストを検索対象とする「図面内テキスト検索」や、数値範囲を含む検索が可能な「数値検索」は、他のデータベースにはない独自の強力な機能として評価されている。

近年では、2023年10月に生成AIを活用した検索支援・要約作成機能をリリースし、ユーザーの検索式作成や査読業務の効率化を推進している。また、国内の知財訴訟情報を網羅するオプション「Jiplit」や、SDI配信結果をAIが重要度順に並べ替える「AIクラスタリング」など、機能拡張を積極的に進めている。導入費用や超過利用料などの隠れたコストがなく、標準価格内で多くの機能を利用できるコストパフォーマンスの高さも魅力の一つである。国内特許調査を主に行う研究開発者や知財担当者にとって、J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)にはない高度な機能を提供する有力なツールと位置づけられる。

CKS Web ロゴ

詳細レポート

CKS Webの基本仕様とサービス体系

CKS Webは、中央光学出版株式会社が運営する国内特許・実用新案を対象としたウェブベースの検索システムである。2005年にサービスを開始し、特許調査業務で必要とされる機能の多くを標準で提供している。

  • 提供元: 中央光学出版株式会社
  • 対象: 日本の特許・実用新案
  • データ収録範囲: 昭和46年(1971年)からの全文検索に対応
  • 価格体系: 応相談。導入費用や一定量を超えた利用料が発生しない、分かりやすい価格設定を特徴としている。

中核となる検索機能の分析

CKS Webは、多様な調査ニーズに応えるため、複数のユニークで強力な検索機能を搭載している。

CKS Web 製品イメージ

図面内テキスト検索
この機能は、特許公報の図面部分に含まれるテキスト情報をOCR(光学文字認識)技術で抽出し、検索可能にするものである。特に、明細書の全文検索ではヒットしない、図面内の「表」にのみ記載されているキーワードや数値を捕捉できる点が最大の利点である。化学分野など、表形式のデータが重要な技術分野の調査において特に有効性が高いとされている。

  • 対象データ: 1993年以降に発行された電子公報の表データ。
  • 制約事項: OCRの精度に依存するため、図面の状態によっては文字を正確に認識できない場合がある。特に、横向きにレイアウトされた表は正しくテキスト化されないケースが報告されている。

数値検索
数値範囲を指定した発明(例:「温度が50℃から100℃の範囲」)の調査において極めて有効な機能である。キーワード、数値、単位を組み合わせて検索でき、公報本文に「A~B」のように範囲で記載されている場合でも、その範囲内に含まれる特定の値を検索条件としてヒットさせることが可能である。この機能は、先行技術調査だけでなく、特許の有効性を争う無効資料調査においても必須のツールと評価されている。

近傍検索
複数のキーワードが近接して出現する公報を検索する機能で、キーワードの出現順序は問わない。これは、J-PlatPatの論理演算子「N」を用いた検索と類似している。ただし、一部の競合ツール(例:SRPARTNER)が持つ、語順を考慮した隣接検索(ADJ)機能は搭載しておらず、より複雑な概念を表現する検索式の作成においては機能的な制約となる可能性がある。

その他の検索機能
基本機能として、以下の多様な検索アプローチが提供されている。

  • 通常検索
  • コマンドライン検索
  • 簡易検索
  • 番号検索

生成AIの導入と機能拡張

2023年10月20日、CKS Webは生成AIを活用した4つの新しい検索・査読支援機能をリリースした。これにより、特許調査の専門家でないユーザーの参入障壁を下げるとともに、熟練者の業務効率を向上させることを目指している。

機能名種別概要
分かりやすい特許分類説明標準機能IPCやFIといった特許分類の定義を、生成AIが平易で理解しやすい言葉で解説する。
生成AI要約作成機能オプション難解な特許文書を、技術的特徴が分かりやすい要約(基本要約・実施例要約)に変換する。チケット制で提供される。
類義語の提案機能オプション入力したキーワードや文章に対し、関連性の高い類義語を提案する。特許分類を掛け合わせることで、技術分野を絞った類義語の選定が可能。
特許分類の提案機能オプション入力したキーワードや自然言語の文章から、検索に適した特許分類(IPC/FI)をAIが提案する。

オプション機能と関連サービス

標準機能に加え、特定のニーズに応えるための有償オプションや関連サービスが充実している。

国内知財訴訟検索 (Jiplit®)
2023年4月にリリースされた、日本国内の知的財産に関する訴訟情報を検索できるオプション機能。

  • 収録情報: 判決に至った判例情報だけでなく、現在係争中の案件や、和解・取り下げによって終結した案件も網羅する。
  • 機能: 特定の企業や技術分類に関連する訴訟が発生した場合に通知を受け取るSDI・ウォッチング機能や、裁判記録の閲覧・報告を代行するサービスも提供する。

Jiplit ロゴ

AIクラスタリング機能
SDI(定期的情報配信)で得られた大量の特許リストを、AIが事前に学習した教師データに基づいて「推奨査読順」に並べ替えるオプション。これにより、重要度の高い文献から効率的にスクリーニング作業を進めることが可能になる。

拡張メモ機能
検索結果に対して付与するメモ機能を強化する有償オプション。キーワード選択型、階層型、フリーテキスト型の3種類があり、複数のユーザーID間でメモを共有し、編集・閲覧権限を管理できるため、組織的な調査活動の効率化に寄与する。

CKS SDI Webservice (CSW)
指定した技術分野や競合他社に関する最新の特許情報を定期的に配信するサービス。侵害予防調査や技術動向のモニタリングに活用される。

出力・分析機能と競合比較

CKS Webは、調査結果の活用を支援する強力な出力・分析機能を備えている。ExcelやCSV形式で約270項目もの詳細なデータを出力できるほか、簡易的なパテントマップ(棒グラフ、ヒートマップ)の作成も可能である。

日本の特許データベース市場には、無料のJ-PlatPatから、多機能な商用ツールまで多数のサービスが存在する。

サービス名運営会社特徴対象範囲
CKS Web中央光学出版(株)図面内テキスト検索、数値検索、生成AI機能。国内特化。国内
J-PlatPat(独)工業所有権情報・研修館無料で利用できる公式データベース。基本的な検索機能を提供。国内・一部海外
SRPARTNER(株)日立システムズ高度な近傍検索機能。オフィス利用を想定したShare Researchの個人向け版。国内・海外
Patent SQUAREパナソニック(株)大企業での導入実績が豊富。AIによる自動分類機能など。国内・海外
PatSnapPatSnap (UK) Limitedグローバルな特許・意匠をカバー。直感的なUIと高度な分析機能。中央光学出版が代理店。グローバル
ULTRA Patent(株)ウィズドメイン特許評価点数など独自の分析指標を持つ。レポート機能が充実。国内・海外

CKS Webは、グローバルな特許を網羅するPatSnapやOrbit Intelligenceなどとは異なり、国内特許に特化することで、日本の公報形式に最適化されたユニークな機能(図面内テキスト検索など)とコストパフォーマンスを実現している点が、競合に対する優位性となっている。